Nature/Science 誌の有機化学系論文 (2016年7月-11月)


前回の Nature/Science 誌の有機化学系論文 (2016年4月-6月) に引き続き、7-11月の間にも有機化学系の論文が Nature/Science 誌にそれぞれ 10/15 報も掲載されましたので、下に日本語タイトルとリンクをまとめました。

今回の Sarah E. Reisman 先生の「(+)-リアノドールの15段階合成」や Guangbin Dong 先生の「シクロペンタノンの炭素-炭素結合の触媒的活性化」や Robert R. Knowles 先生の「遠隔C-H結合の触媒的アルキル化」、前回の Thomas J. Maimone 先生の「オフィオボリンセスタテルペンのエナンチオ選択的合成」など、若手の先生方のお仕事も続々と Nature/Science 誌に掲載されていますね。

Nature
シクロペンタノンの炭素-炭素結合の触媒的活性化
doi: 10.1038/nature19849
プロトン共役電子移動によって可能になる遠隔C-H結合の触媒的アルキル化
doi: 10.1038/nature19811
非活性化sp3 C-H結合におけるアミド配向基を用いる光酸化還元触媒的C-C結合形成
doi: 10.1038/nature19810
水素化反応の選択性調節剤としての金属有機構造体
doi: 10.1038/nature19763
生体関連有機反応の自己触媒的双安定振動ネットワーク
doi: 10.1038/nature19776
in vivoメタセシス用の人工金属酵素の定方向進化
doi: 10.1038/nature19114
プロパルギル基およびアリル基の触媒的エナンチオ選択的1,6-共役付加
doi: 10.1038/nature19063
小分子鉄触媒反応によるアミノ酸とペプチドの酸化的多様化
doi: 10.1038/nature18941
金属光酸化還元触媒によるカルボン酸とハロゲン化アルキルのsp3-sp3クロスカップリング
doi: 10.1038/nature19056
電子-プロトン移動メディエーターを用いる協同的な電極触媒的アルコール酸化
doi: 10.1038/nature18008

Science
シトクロム c の炭素-ケイ素結合生成を指向した展開: 生命にケイ素を持ち込む
DOI: 10.1126/science.aah6219
脂肪族アミンβ位炭素-水素結合の一般的触媒でのカルボニル化によるβ-ラクタムへの変換
DOI: 10.1126/science.aaf9621
バトラコトキシンの不斉合成:2つの光学異性体が電位依存性ナトリウムチャネルに対して異なる機能を持つ
DOI: 10.1126/science.aag2981
モリブデン錯体における X-H 結合の配位による弱化
DOI: 10.1126/science.aag0246
バイオインスパイアード鉄触媒による硝酸塩と過塩素酸塩の還元
DOI: 10.1126/science.aah6886
金属触媒によるオレフィン系求核剤の還元的カップリング: カルボニル付加の再発明
DOI: 10.1126/science.aah5133
天然酵素と同等の反応動態を持つ人工金属酵素
DOI: 10.1126/science.aah4427
ヒドロキシルアミンを用いたジロジウム触媒によるC-Hアレーンのアミノ化反応
DOI: 10.1126/science.aaf8713
銅触媒によるラジカルリレーを経由したベンジル位 C-H 結合のエナンチオ選択的シアノ化
DOI: 10.1126/science.aaf7783
配位子により促進されるエナンチオ選択的メチレン (sp3) 結合活性化
DOI: 10.1126/science.aaf4434
(+)-リアノドールの15段階合成
DOI: 10.1126/science.aag1028
キラルな金属有機構造体中の分子の配位の調整
DOI: 10.1126/science.aaf9135
リガンドフリーニッケル(U)塩と光酸化還元触媒を用いたアリールアミノ化反応
DOI: 10.1126/science.aag0209
銅触媒によるオレフィン由来の求核剤のケトンへの不斉付加
DOI: 10.1126/science.aaf7720
アルケンの触媒不斉ジフルオロ化によるジフルオロメチル構造不斉中心の生成
DOI: 10.1126/science.aaf8078

Phil. S. Baran 先生、David W. C. Macmillan 先生、Jin-Quan Yu 先生は完全に Nature/Science 誌の常連さんですね。

気ままに有機化学 2016年12月13日 | Comment(0) | 論文 (その他)

Nature/Science 誌の有機化学系論文 (2016年4月-6月)


4月に Nature/Science 誌の有機化学系論文 (2015年度下半期) という記事を書いたばかりですが、この4月-6月の間に Nature/Science 誌に有機化学系の論文がそれぞれ11/10報もありましたので、下に日本語タイトルとリンクをまとめました (漏れがあればご連絡ください)。今回もお馴染み Baran 研から3報 [1][2][3] も出ているのが印象的です。

Nature
(+)-ホルボールの19ステップ全合成
doi: 10.1038/nature17153
[関連] Phorbol Synthesis (Open Flask)
ラジカルのイミニウムイオン捕捉による第四級炭素の触媒的不斉構築
doi: 10.1038/nature17438
銅触媒を用いたアミノアルコールのエナンチオ選択的立体分岐型(stereodivergent)合成
doi: 10.1038/nature17191
ペンタデヒドロ・ディールス・アルダー反応
doi: 10.1038/nature17429
スケーラブルかつ持続可能な電気化学的アリルC–H酸化
doi: 10.1038/nature17431
[関連] C–H Oxidation Meets Electrochemistry (Open Flask)
活性化されていないC–H結合の部位選択的かつ立体選択的な官能基化
doi: 10.1038/nature17651
新規マクロライド系抗生物質探索のための構築基盤
doi: 10.1038/nature17967
鉄(III)触媒を用いたカルボニル–オレフィンメタセシス
doi: 10.1038/nature17432
化学燃料で動く自律型小分子モーター
doi: 10.1038/nature18013
19F−および18F−による協奏的求核芳香族置換
doi: 10.1038/nature17667
鉄の代わりに貴金属を含有する人工ヘムタンパク質による非生物触媒反応
doi: 10.1038/nature17968

Science
簡潔で再構成可能なシステムによる医薬品のオンデマンド連続フロー生産
DOI: 10.1126/science.aaf1337
鈴木‐宮浦反応において明確でなかったプレトランスメタルの中間体構造を解き明かす
DOI: 10.1126/science.aad6981
アルケン置換芳香族N-複素環へのGrignard試薬の触媒的不斉付加
DOI: 10.1126/science.aaf1983
速度論的に制御されたE-選択的触媒オレフィンメタセシス反応
DOI: 10.1126/science.aaf4622
サブミリ秒の有機合成:高速マイクロ混合によりフリース転位に勝つ
DOI: 10.1126/science.aaf1389
[関連] Micro Flow Reactorで瞬間的変換を達成する (化学者のつぶやき)
酸化還元活性エステルとアルキル亜鉛試薬を用いた一般的なアルキル−アルキルクロスカップリング反応
DOI: 10.1126/science.aaf6123
[関連] Making C–C Bonds with the Simplicity of Making Amide Bonds (Open Flask)
計画的ラジカルカスケードによるオフィオボリンセスタテルペンのエナンチオ選択的合成
DOI: 10.1126/science.aaf6742
可視光により進行する原子移動ラジカル重合
DOI: 10.1126/science.aaf3935
触媒的三重クロスカップリング反応の本来の機能性:潜在的求核剤としてのsp3 C-H結合
DOI: 10.1126/science.aaf6635
分子結び目(molecular knot)による触媒のアロステリックな活性化と制御
DOI: 10.1126/science.aaf3673

Nature/Science 誌に有機化学系論文が掲載されるのは、10年前には1年に1-2報くらいだったのに、最近は本当に多くなりましたね。Nature/Science 誌の購読権がある方は、定期的にチェックすると面白い論文が見つかるかもしれません。

気ままに有機化学 2016年07月10日 | Comment(0) | 論文 (その他)

Nature/Science 誌の有機化学系論文 (2015年度下半期)


これまでも Nature/Science 誌に有機化学系が多いと思ったときは紹介してきましたが [関連1][関連2][関連3]、2015年度下半期 (2015年10月〜2016年3月) にも多数の有機化学系の論文が掲載されています。下に日本語タイトルとリンクをまとめました (漏れがあればご連絡ください)。Nature/Science 誌の購読権がある方は、定期的にチェックすると面白い論文が見つかるかもしれません。

Nature
触媒を用いた交差メタセシスによる Z -ハロゲン化アルケニルの直接合成
doi: 10.1038/nature17396
炭酸塩で促進されるC-Hカルボキシル化による二酸化炭素利用
doi: 10.1038/nature17185
パラジウムに触媒される脂環式アミンの渡環C-H官能基化
doi: 10.1038/nature16957
ディールス・アルダー反応の静電触媒反応
DOI:10.1038/nature16989
ウランを介した水からの電極触媒的水素分子生成
doi: 10.1038/nature16530
鉄触媒を用いた医薬化合物のトリチウム化
doi: 10.1038/nature16464
ネットワーク解析から指針を得たワイサコニチンDとリルジェストランジニンの合成
doi: 10.1038/nature16440
過渡的な配向基を介する、ロジウム触媒を用いたアルケンのsyn-カルボアミノ化
doi: 10.1038/nature15691
システイン・バイオコンジュゲーション用の有機金属パラジウム試薬
doi: 10.1038/nature15739

Science
メタンおよびエタンのC-Hホウ素化反応における触媒制御選択性
DOI: 10.1126/science.aad9289
メタンの触媒的ホウ素化反応
DOI: 10.1126/science.aad9730
シリル化C-H酸による不斉ルイス酸有機触媒ディールズ-アルダー反応
DOI: 10.1126/science.aae0010
キラルブロンステッド酸触媒としての芳香族イオンプラットフォーム
DOI: 10.1126/science.aad0591
パラジウム-スズ触媒による過酸化水素の高選択的直接合成
DOI: 10.1126/science.aad5705
制御可能なシアン化水素移動反応を経由した触媒的かつ可逆的アルケン-ニトリル相互変換
DOI: 10.1126/science.aae0427
一過性の配向性基を利用した C(sp3)-H 結合の官能基化
DOI: 10.1126/science.aad7893
歪み解放アミノ化 (Strain-release amination)
DOI: 10.1126/science.aad6252
金属誘起メタラート転移が可能にした触媒コンジャンクティブクロスカップリング反応
DOI: 10.1126/science.aad6080
遷移金属触媒のための超分子微小環境戦略
DOI: 10.1126/science.aad3087
グルコセパンの効率的全合成
DOI: 10.1126/science.aac9655
均一系コバルト触媒を用いたカルボン酸の水素化反応
DOI: 10.1126/science.aaa8938

[関連1] Nature/Science 誌に有機化学が続々登場 (気ままに有機化学)
[関連2] 今月も Nature/Science 誌に有機化学が続々登場 (気ままに有機化学)
[関連3] 2ヶ月間で Nature/Science 誌に有機化学系が10報 (気ままに有機化学)

気ままに有機化学 2016年04月05日 | Comment(2) | 論文 (その他)

プロセス系溶媒の NMR ケミカルシフト一覧


プロセス化学の汎用溶媒の NMR ケミカルシフト (1H、13C) の一覧が論文になりました [論文]。2-Me-THF、n-heptane、iso-propyl acetate 等の溶媒が含まれます。

プロセス系の研究者はもちろん、それ以外の研究者にも、過去に紹介した Organometallics, 2010, 2176. (残留溶媒・試薬の NMR データ) や J. Org. Chem. 1997, 7512. (各種溶媒の各種重溶媒中の NMR データ) に載っていない溶媒の NMR データを参照したいとき (残留溶媒の確認など) に重宝しそうです。

[論文] Org. Process Res. Dev., Article ASAP (DOI: 10.1021/acs.oprd.5b00417)

気ままに有機化学 2016年02月24日 | Comment(0) | 論文 (その他)

2ヶ月間で Nature/Science 誌に有機化学系が10報


これまでも Nature/Science 誌に有機化学系が多いと思ったときは紹介してきましたが [関連1][関連2]、この8月9月の約2ヶ月間にも10報の有機化学系の論文が掲載されていました。論文タイトルとラストオーサーとリンクをまとめると以下の通り。David W. C. MacMillan 先生が3つも出しているのが印象的です。

ニッケル触媒を用いたアミドC–N結合の活性化によるアミドからエステルへの変換
(Neil K. Garg) doi: 10.1038/nature14615
敏感な試薬をカプセル化して投入することで合成にグローブボックスが不要になる
(Stephen L. Buchwald) doi: 10.1038/nature14654
光酸化還元触媒反応を用いて実現困難な有機金属機構を始動させる
(David W. C. MacMillan) doi: 10.1038/nature14875
臭化アリールとアリールトリフラートの多金属触媒クロスカップリング
(Daniel J. Weix) doi: 10.1038/nature14676
ヘテロアレーンC–H官能基化におけるアルキル化剤としてのアルコール
(David W. C. MacMillan) doi: 10.1038/nature14885
単純なピロール系出発物質からの(+)-バツェラジンBの簡便合成
(Seth B. Herzon) doi: 10.1038/nature14902
O-H水素結合が、アルコールのα C−アルキル化においてC-H結合からの水素原子の移動を促進している (David W. C. MacMillan) DOI: 10.1126/science.aac8555
光酸化還元触媒作用を経由した位置選択的C-Hアミノ化
(David A. Nicewicz) DOI: 10.1126/science.aac9895
鉄触媒による不活性アルケンの分子間 [2+2] 環状付加
(Paul J. Chirik) DOI: 10.1126/science.aac7440
メタルフリー触媒によるC-H結合活性化とヘテロアレーンのホウ素化
(Frédéric-Georges Fontaine) DOI: 10.1126/science.aab3591

[関連1] Nature/Science 誌に有機化学が続々登場 (気ままに有機化学)
[関連2] 今月も Nature/Science 誌に有機化学が続々登場 (気ままに有機化学)

気ままに有機化学 2015年10月12日 | Comment(0) | 論文 (その他)