よっちゃんの大学院時代の研究室の先輩がこんなことを言っていたのを今でも覚えています。「C-H 活性化、特に1級・2級・3級、sp1・sp2・sp3 の区別、ある官能基からの位置制御なんかを全部できるようになったら面白いのになぁ」と。
さて、今回紹介するのは Science から、電子密度や立体障害、Directing Group による選択性の高い、しかも反応点の予測ができる C-H 酸化反応です。ちなみに反応条件は極めて穏和で、複雑な分子の合成にも使えます。今まで不可能だった反応がまた1つ可能になりました!
注目の論文はこちら。
"A Predictably Selective Aliphatic C-H Oxidation Reaction for Complex Molecule Synthesis."
Chen, M. S.; White, M. C. Science 2007, 318, 783.
イリノイ大学の M. Christina White 教授の素晴らしい仕事です。個人的なイメージですが、イリノイ大学の化学科は John F. Hartwig 教授といい、遷移金属を使った反応開発が上手い気がします。ちなみに M. Christina White 教授は若手の女性研究者で、彼女の HP を見てもらえればその容姿と研究内容がわりますが、遷移金属を用いた C-H 官能基化の反応屋さんです(その反応を用いた合成もやってます)。
さて、今回の反応のウリはその選択性と温和な反応条件です。選択性については、
(1) 三級 C-H が優先、
(2) 電子密度が高い C-H が優先、
(3) 立体的に空いている C-H が優先、
(4) 立体保持、
という傾向があります。今回の反応のような高い選択性は他の C-H 酸化反応では見られないそうです。
それから反応条件ですが、下図に示す standard condition というのは CH3CN 中、室温の反応条件のことです。また cat.4 というのはトップの絵の鉄錯体(5mol%)のことです。以上を踏まえて下図に面白い例を3つだけ抜粋して紹介します。
I. のアルテミシニンの酸化ではパーオキシドを開裂させずに数あるC-Hの中から選択的に酸化しています。選択性は上に述べたルールに則っていて、予測可能であり、この反応は酵素反応に匹敵するものです(原料回収→反応を2回して54%収率)。
II. の酸化ではほとんどどこも酸化されません。中心部の C-H は電子的に酸化されにくくなっており、側鎖のイソプロピル基は立体的に酸化されにくくなっているとのこと。
III. のジベレリン酸類縁体の酸化では、カルボン酸が Directing Group として働き、より反応性の低い2級 C-H が位置選択的・立体選択的に参加されるというもの。
この反応の選択性・穏和な反応条件は天然物合成の強力なツールの1つになることは間違いなさそうです。強いて言えば、反応メカニズムの解析(ヒドロキシラジカル?鉄-ヒドロキシ or 鉄-パーオキシド?)が待たれることと、より強力な触媒活性を有する錯体をデザインして収率が上がれば言うことなし、でしょうか。更なる研究が楽しみな論文でした。
研究はすごいけど、悪趣味なおばちゃんって感じやね。
おれの論文は蹴られて、ムッキーってところ。
けろぴのテンションが自虐的なのが気持ち悪い。
おガーターさん、元気にしてますかね?
ぱかたさんの論文蹴られたんですか!?最近なかなか論文がアクセプトされないですね。苦笑。自虐的っていうのは「俺の力がなくてごめんよ〜」とかですか?「お前の論文の書き方/英語が悪いんだ〜」とかじゃなくて。
よっちゃんいくの?
国際プロセスの White の話、是非聞きに行きたいのですが、残念ながら他のセミナーに参加するため今回は不参加です。会社が協賛しているので無料で行けるはずなんですが・・・残念。