Sumanene の合成

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フラーレンのフラグメントの構造には 2 種類考えられます。1 つは五員環を中心とした Corannulene で、もう1つは六員環を中心とする Sumanene です。

Corannulene の合成はフラーレンの発見(1985 年)以前の 1966 年に合成がなされていました。一方、Sumanene はそれからずいぶん先の 2003 年に平井先生、桜井先生によって極めて巧妙な初の合成が報告されました [論文1]

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ノルボルナジエンを三量化し、その3ヶ所のオレフィンを Ring-Opening-Metathesis、Ring-Closing-Metathesis によって組み替えて一挙に骨格を構築し、酸化的に脱水素して Sumanene へと導くものです。

これまで誰も合成できなかった Sumanene をわずか3〜4ステップで合成する非常に綺麗なルートだと思います。この論文は有機合成としては珍しく Science 誌に掲載されました。

Sumanene はフラーレンと同じように歪んだ芳香族であるため、通常の芳香族化合物とは違った物性、反応性が期待されます。最近になって Sumanene の結晶構造解析がなされ、皿が積み重なるような形に詰まっていることが明らかになるました。この構造では π 電子が相互作用するため、何らかの面白い電子的性質が期待できそうです。また、Sumanene の五員環に付いた水素原子は反応性が高いため、ここを足がかりとして普通には手に入らないフラーレン誘導体を合成する試みが成されています [論文2]

確かフラーレンの化学合成はまだ達成されていなかったと思うので、もしアイデアがある方は挑戦してみてはいかがでしょうか?

[論文1] "A Synthesis of Sumanene, a Fullerene Fragment" H. Sakurai et al. Science 2003, 301, 1878
[論文2] "Structural Elucidation of Sumanene and Generation of Its Benzylic Anions" H. Sakurai et al. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 11580

気ままに有機化学 2007年01月19日 | Comment(0) | TrackBack(0) | 論文 (合成)
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