新反応発見の方法論 (2)

昨日の 新反応発見の方法論 (1) では Hartwig らの新反応を積極的に効率的に探索する手法について紹介しました。一方、ほぼ同時期の 2011 年 11 月には David W. C. MacMillan らが似て非なる手法で新規反応を発見したことを報告しています [論文]。MacMillan らが選んだ基質は主に以下の 19 種類。Hartwig らの選んだ基質とはまた一味違って、比較するとなかなか面白いです。


昨日紹介の Hartwig らは 17 の基質をすべて混ぜることで 1 回の実験で反応しうる基質の組み合わせを飛躍的に増やしました。一方で、速い反応によって基質がなくなってしまうと遅い反応は見逃すことになってしまう、また官能基許容性の低い反応は見出すことはできないという欠点がありました。

本日紹介の MacMillan らは 19 の基質をペアの組み合わせ (19×18/2=171 通り) にし、そこに触媒系を加えるという手法です。組み合わせの数が多くなりますが、Chemspeed というロボットを使って基質の組み合わせを調製し 96 穴プレートで反応させています。そして、GC-MS で興味深い反応が起きたか有益な生成物ができたか確認するというプロトコール。この実験系で 1 人の実験者で 1 日に 1000 の反応を検討できるとのことです。

実際にこの方法で遷移金属の触媒系を検討したところ、3 つの既知の反応に対して新しい触媒が見つかったそうです。これらを発見するのに必要だった実験数は 3500 以下だったとか。しかし、予期せぬ反応を発見するためにはもっと未知な領域の反応にこの方法を適用するべきだと考えて、ターゲットを光酸化還元 (photoredox) 触媒に移します。種々の光酸化還元触媒を 26W 家庭用蛍光灯の照射下で検討したところ (これも Chemspeed で実施)、下図のようなアミンの C-H アリール化反応を見出だしました (1000 以下の実験で発見)。反応も新規で生成物も医薬品によく見られる構造であることから反応を最適化し、広い基質に適用できる反応に仕上げました。


以上、Hartwig も MacMillan も多数の基質や触媒系の組み合わせを系統的に検討することで新反応を効率的に見つけ出すアプローチを開発しました。基質の種類、添加剤、触媒系などを変えて同様に検討すれば、さらに多数の新反応が見つかるかもしれません。

「新反応を効率的に見つけるためにはどうすればよいか?」――今回紹介した論文の手法はその答えの 1 つですが、もっとスループットの高い方法や、もっとユニークな反応を探索する方法があるかもしれません。また、彼らの方法はどちらかというとセレンディピティを促進するアプローチですが、アナロジーを促進するようなアプローチもあるかもしれませんね (例えば計算化学やシミュレーションの領域でそういった研究はないでしょうか?)。 [→ 反応最適化の方法論 (1) へ続きます]

[論文] "Discovery of an a-Amino C-H Arylation Reaction Using the Strategy of Accelerated Serendipity" Science 2011, 334, 1114.

気ままに有機化学 2011年12月14日 | Comment(0) | TrackBack(0) | 論文 (反応)
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