さて、私自身はスズ化合物の除去には別の方法を使っています。私の方法は 普通のシリカゲルの代わりに、アミノシリカゲルを使ってカラムをするだけです。アミノシリカゲルというのは、下図のように表面にアミノ基を導入して塩基性にしたシリカゲルのことです。アミノシリカゲルを使う長所は多彩な形態 (粉末、充填、TLC、PTLC) で販売されていること、短所は値段が高いこと、不明な点は分離能がどちらがいいのか分からないこと、です。
まず長所ですが、アミノシリカゲルは 「通常の粉末タイプ」 も 「プラスチックのカラムに充填されたタイプ」 も 「TLC プレート」 も 「分取 TLC (preparative TLC, PTLC)」 も売っています。なので、いつも充填されたタイプを使っているという方 (値段が高いので主に企業の方だと思います) にも簡便に使える方法です。また、上の化学者のつぶやきさんの記事には 「展開溶媒も、TLC 検討で見つけた条件がそのまま使える模様。」 と書かれていますが、これはおそらく中性化合物の場合のみではないでしょうか?(論文読めていないので間違いだったら教えてください)。炭酸カリウムで塩基性になったカラムは、おそらく塩基性化合物は早く溶出し、酸性化合物の溶出は遅くなるはずです。少なくともアミノシリカゲルではそのような傾向があります。そのため、アミノシリカの TLC プレートがあるというのは便利で、溶出条件を検討することができます。一方、炭酸カリウム/シリカゲルの TLC プレートは市販されていないので、中性化合物以外の場合に溶出条件の検討が困難になります。同様に、少量の反応の際にアミノシリカは分取 TLC ができるというメリットもあります。
しかしながらアミノシリカゲルは高価だという短所があります。正確な値段は覚えていないのでメーカーに問い合わせて欲しいのですが、通常のシリカの商品に比べて 2〜3 倍くらいの値段がしたように思います。研究費に多少の余裕があってスズの反応をよくやる方は、一度試してみてはいかがでしょうか? (私の大学院時代の先輩で助教をされている方に一度試してもらったことがありますが、なかなか好評でした)
[2010.11.14. 追記]
アミノシリカゲルにはアルデヒドが吸着 (反応) して出てこなくなるという短所もあります。コメント欄でご指摘くださった LJ さん、ありがとうございます!
それから不明な点は、分離能はどちらがいいのかわからないということです。私は上記の理由からこれからもアミノシリカゲル法でスズ化合物を処理するつもりですが、炭酸カリウム/シリカゲル法の方が分離能が高い可能性もあります。興味を持たれた方は是非、どちらの分離能が高いのか、アミノシリカゲル法でどのようなスズ化合物が除去されるのか、調べてみてください。もしかしたら炭酸カリウム/シリカゲル法のように論文にできるかもしれません。もし論文にされる際は私の名前も共著者のどこかに・・・とまでは言いませんが、お知らせいただけると幸いです。(論文にしなくても、やってみて 「良かった」 とか 「こういう欠点がある」 とか気軽に感想聞かせてくださいね)
◆ アミノシリカゲル法のメリットまとめ
・ 粉末タイプも充填タイプも両方とも市販されている
・ アミノシリカの TLC も市販されているため、溶出条件検討が容易に行える
・ アミノシリカの PTLC も市販されているため、少量反応の分取 TLC も行える
◆ アミノシリカゲル法のデメリットまとめ
・ アミノシリカ系商品は値段が高い
・ アルデヒドが吸着 (反応) して出てこなくなる
・ 分離能がどの程度なのか、どのようなスズ化合物が除去されるのか詳細な検討はされていない
[関連1] 有機合成実験の後処理に関する Tips まとめ (気ままに有機化学)
[関連2] アンパンマン反応 (気ままに有機化学)
私もアミン系の化合物の精製に使うことがたまにありましたけど、スズが除けるとは知りませんでした。今度試してみます!
私が知っているデメリットはアルデヒド(物によってはケトンも)が吸着してしまって出てこないとかです。
こんにちは。お返事遅くなってしまいましたが、貴重なご指摘ありがとうございます!本文にも追記で書かせていただきました。今後も気づいた点があれば気軽にコメントくださいね。