Theodore Gray (テオ・グレイ)、テーブルからテレビまでの道程


【緊急連絡】 本日 10 月 9 日 18:30 から放送の 『世界一受けたい授業』 で米村でんじろう先生と Theodore Gray (テオ・グレイ) のスリリングな実験対決 (世界一実験王決定戦) があるそうです!でんじろうファンの方も Gray ファンの方もお見逃しなく!

上の写真の Theodore Gray (テオ・グレイ あるいは セオドア・グレイ) というおじさん、ご存知でしょうか?先日 化学者のつぶやき で紹介されていたので 「見た見た」 と思ってらっしゃる方も多いかと思います。今回私は Theodore Gray の数々の業績を結びつけるストーリーに焦点を当てて紹介したいと思います。 

まずは ずいぶん前 に一度紹介した 周期表 (periodic table) のテーブル "Periodic Table Table" から。このジョークとしか思えない名前のテーブル、ある勘違いから思いついて作成し、その後の彼の人生を大きく変えることになります。


周期表のテーブル "Periodic Table Table"

事の発端は彼がオリヴァー・サックスの名著 タングステンおじさん を読んでいたときのこと。本の中で出てくる周期表 (Periodic Table) の "Table" を 「テーブル」 と勘違いしてしまったのです。これは別に彼が化学に無知だったからではなく、そのころ会社に会議用のテーブルが必要でそのことばかり考えていたからなのです。さらにちょうどたまたま、新品だと 1700 ドルもする文字彫り彫刻機をオークションでたった 50 ドルで手に入れることができたのです。

これらの偶然が重なりに重なって Gray は周期表のテーブル (Periodic Table Table) を作り始めます。しかし、彼の文字彫り彫刻機は大きなテーブルを直接彫ることができるようなものではなく、小さくて薄い板しか彫れないものでした。なので各元素を小さな木のタイルに分けて作って張り合わせることを考えました。さらに各タイルの下に箱を作り、その箱の中に各元素でできたものを入れるというアイデアを思いつきます。そして完成した Periodic Table Table のアップの写真が下の通り。勘違いから始まった思いつきで作ったとは到底思えないクオリティの高さです。このテーブルの功績により 2002 年にユーモアにあふれる科学研究に与えられるイグ・ノーベル賞を受賞しています。


Periodic Table Table の近接写真

さて、Periodic Table Table の各元素の下に穴があってその元素でできたものを入れると言いましたが、その集めたモノ達もクオリティがもの凄く高い。このコレクションの美しい写真と元素に関する話を periodictable.com というサイトで公開したところ、世界中で大反響を呼び、今では 「世界一美しい周期表」 として日本でも ポスタープレースマットA4ラミネート版 が販売されています。


世界一美しい周期表 "The Most Beautiful Periodic Table in the World"

さらにその美しいビジュアルを図鑑にまとめた書籍 The Elements は全米で 1 年間で 20 万部売れるベストセラーに、その日本語版の 世界で一番美しい元素図鑑 は今月 22 日に発売予定です。

The Elements: A Visual Exploration of Every Known Atom in the Universe   世界で一番美しい元素図鑑

これだけの大ベストセラー商品の数々を生みだしても満足しないのが Gray。その脳裏にはある憧れがありました。それは『ハリー・ポッター』。Gray は考えました。もし、ハリー・ポッターが通う魔法の学校「ホグワーツ」の図書館に「元素図鑑」があったら、どんな本だろうか?おそらくどのページをめくっても文字と写真だけの退屈な本にはならないはず。例えば水素の説明では、本の上に小さな太陽の立体映像が浮かび上がって、小さな爆発をつづけている様子が確認できたり、本の上の泡が浮かび上がってははじけていく――そのイメージにできるだけ近いものを目指して作られたのがコレ。iphone や iPad で楽しめるアプリ 元素図鑑: The Elements in Japanese です。現時点で最高の化学アプリですね。


さて、Periodic Table Table でイグ・ノーベル賞を受賞し有名になった Gray の元に Popular Science 社から連載記事の執筆の依頼がやってきます。そうして生まれたのが人気科学実験コーナー Gray Matter。そしてこの連載記事などを元に作られたサイトが 以前 紹介した Mad Science by Theo Gray。こちらのサイトでは 『超危険な』 科学実験の動画や解説などが多数紹介されています。よい子はマネしちゃいけない・・・いや、マネしようと思ってもできないような事ばかり。例えば下の動画では、ポップコーンの味付けの塩を作るためにナトリウム単体と気体塩素を反応させてみたり。


このサイトも大人気を博し、アメリカでは Theo Gray's Mad Science: Experiments You Can Do at Home--But Probably Shouldn't という意味深なタイトルで書籍化、日本でも今年の 5 月に Mad Science ―炎と煙と轟音の科学実験54 として販売されています。

Theo Gray's Mad Science: Experiments You Can Do at Home--But Probably Shouldn't  Mad Science ―炎と煙と轟音の科学実験54

以上、Gray 氏の数々の業績をまとめると、まず "Periodic Table" をテーブルと勘違いしてしまったことから "Periodic Table Table" を製作、イグ・ノーベル賞受賞。そのテーブルに収めた数々の元素アイテムから 「世界一美しい周期表」 グッズを作成、さらにハリー・ポッターの世界を目指して iアプリの 「元素図鑑」 を公開。また、イグ・ノーベル賞で有名になったことから雑誌に科学実験の連載記事を執筆、それをもとに Mad Science というサイトを運営、それが日米で書籍化。そしてそれらが話題となってついに本日、日本のテレビにも出演。

すべての発端となった "Periodic Table Table" のアイデアは偶然の影響も大きいようですが、それを実際に実行に移す力、そして極めて高いクオリティで仕上げる力、さらに他の作品につなげる力には脱帽ですね。科学ファンを魅了してやまない Theodore Gray (テオ・グレイ あるいは セオドア・グレイ)、今後の活動にも注目ですね。

【緊急連絡】 本日 10 月 9 日 18:30 から放送の 『世界一受けたい授業』 で米村でんじろう先生と Theodore Gray (テオ・グレイ) のスリリングな実験対決 (世界一実験王決定戦) があるそうです!でんじろうファンの方も Gray ファンの方もお見逃しなく!

[参考1] The Periodic Table Table Construction History (theodoregray.com)
[参考2] 「元素図鑑」はハリー・ポッターの世界を目指してつくられた (ITmedia)
[関連1] イグノーベル賞受賞者が語る、エクストリーム実験の面白み (ascii.jp)
[関連2] 【書籍】アリエナイ化学実験の世界へ―『Mad Science』 (化学者のつぶやき)

気ままに有機化学 2010年10月09日 | Comment(0) | TrackBack(0) | サイト・ツール・本
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