Nakamuric acid はナカムラ酸か?


最近、いくつかのサイトなどで人の名前のような化合物としてナカムラ酸 (→ 中村さん) が紹介されているのを見かけます。人名のような化合物としては古くから オカダ酸 が知られていて、個人的には エイコサン なんかもそれっぽいなと思っていています。(→ ふたつ合わせてオカダエイコさん)

さて、本題ですがナカムラ酸は本当にナカムラ酸でしょうか?というのは、英名は "Nakamuric acid" なので和名は 「ナカムル酸」 になるのが順当ではないでしょうか?例えば "Fumaric acid" は 「フマル酸」 ですよね?同様に考えると "Nakamuric acid" は 「ナカム酸」 のはずです。実際に科学技術振興機構の 日本化学物質辞書Web では "Nakamuric acid" は 「ナカムル酸」 と訳されています。

なるほど!と思ってくださった方も多いかと思いますが、実は話はもうちょっと複雑になります。先に挙げたオカダ酸 (Okadaic acid)、その名前はクロイソカイメン (学名:Halichondria okadai) から初めて単離されたことに由来します。Halichondria okadai の okadai は岡田さんの名前にちなんで付けられたもの [参考1] なので、「オカダ酸」 は元々 「岡田さん」 に由来すると言えるでしょう。一方、Nakamuric acid もホソトゲワカイメン (学名:Agelas nakamurai) から単離されたことに由来し、nakamurai は 「中村さん」 の研究であることに由来します [参考2]。ここで疑問に思うのは Halichondria okadai 由来の酸が Okadaic acid なのに Agelas nakamurai 由来の酸が何故 Nakamuraic acid ではなく Nakamuric acid なのかというところです。このあたり、もし詳しい方がいれば教えていただけると幸いです。

・・・ということで 『Nakamuric acid はナカムラ酸か?』 については以下の 3 つの考え方ができそうです。

(1) 英名は "Nakamuric acid" なのだから、和名は 「ナカムル酸」 だ。
(2) 英名の "Nakamuric acid" が間違いで正しくは "Nakamuraic acid" であり、和名は 「ナカムラ酸」 だ。
(3) 英名が "Nakamuric acid" でも中村さんの海綿由来なのだから、和名は 「ナカムラ酸」 だ。

どれが正しいのでしょうか?他の考え方もあるのでしょうか?皆さんはどう思われますか?

[参考1] 例えば こちらの論文 に "Okadaic acid is a polyether compound with a C-38 structure, isolated from the black sponge Halichondria okadai named in honor of Yaichiro Okada." と書かれていることなどから、おそらく岡田弥一郎先生の名前に由来しています。もし誰かに 「オカダ酸って人の名前っぽくない?」 と言われたら、「うん、下の名前は弥一郎だよ」 とクールに答えてやりましょう。笑
[参考2] 例えば この論文こちらの論文 などから、おそらく中村英士先生の名前に由来していると思われます。

気ままに有機化学 2010年10月02日 | Comment(3) | TrackBack(0) | 用語・英語
この記事へのコメント
楽しく読ませていただきました.
ぜひともすっきりさせたいですね.
個人的には(2)に1票を投じます.
Posted by sora at 2010年10月04日 14:56
おいらなら
Ivaakyric acid
にするなぁ。
Posted by たけやん at 2010年10月07日 19:01
 高校で教員をしてます。授業でオカダ酸という名前を紹介して、テストにも出題しますが、選択肢で「ナカムラ酸」というのも作りました。今日、「ナカムラ酸」というのが存在することを知り、いろいろ調べててこのサイトにたどり着きました。面白いですね。
Posted by Nakamura at 2011年12月01日 22:19
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