珍しい不斉反応 Parallel Kinetic Resolution

不斉触媒反応はおおまかに 2 つに分類されます。1 つはプロキラルな基質から片方のエナンチオマーの生成物を優先的に生成するもの、そしてもう 1 つは片方のエナンチオマーの基質を優先的に反応させる Kinetic Resolution です。これらはご存知の方が多いかと思います。そして珍しい反応ですが実は 3 つ目があります。基質の両方のエナンチオマーを異なる生成物に変換する Parallel Kinetic Resolution です。

下図に示すように、Kinetic Resolution が片方のエナンチオマーが生成物に変換され他方のエナンチオマーが未反応で残るのに対し、Parallel Kinetic Resolution ではそれぞれのエナンチオマーが別々の生成物に変換されるのが特徴です。それら 2 つの生成物がジアステレオマーの場合を "Stereodivergent Kinetic Resolution"、構造異性体の場合を "Regiodivergent Kinetic Resolution"、異なる化合物の場合を "Chemodivergent Kinetic Resolution" などと呼ぶようです。


そして先週の Science に Regiodivergent Kinetic Resolution が報告されました [論文1]。光学活性イットリウム−サレン 2 量体錯体を触媒としたアジリジンとトリメチルシリルアジドとの反応で、R体からはアジリジン環の無置換炭素側から開環が起こり、S体からは置換炭素側から位置選択的・立体選択的に起こったとのこと。極めて高い選択性を達成しています。また、面白いことに得られた 2 つの生成物のキラリティーは一致しているため、この 2 つは化学変換によって単一のジアミン誘導体にすることができます。


メカニズムがよくわかっていないようなのが残念ですが、今年報告されたもう 1 つの Regiodivergent Kinetic Resolution ではメカニズムの概要のようなものが提唱されていますのでご参照ください [論文2]。また Parallel Kinetic Resolution 全般に関しては Denmark グループの セミナー資料 がよくまとまっています。

まだまだ報告例は少ないですが、こういった反応が一般的になってきたら、全合成でキラルなフラグメント 2 種を Parallel Kinetic Resolution で一挙に作り上げる 「一石二鳥」 な報告なども (実用的かどうかは別として) いつか出てくるかもしれませんね。

[論文1] "Regiodivergent Ring Opening of Chiral Aziridines" Science, 2009, 326, 1662.
[論文2] "Reagent-Controlled Regiodivergent Resolution of Unsymmetrical Oxabicyclic Alkenes Using a Cationic Rhodium Catalyst" J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, 444.
[報道1] "Single catalyst gives two products from racemic mixture" (Chemistry World)
[報道2] "Regiodivergent Reaction" (C&EN)

気ままに有機化学 2009年12月22日 | Comment(0) | TrackBack(0) | 論文 (反応)
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