有機化学論文のラテン語

有機化学の論文にはときどきラテン語が出てきます。例えば e.g. とか et al. などなど。いくつか論文を読んでいるうちにわかってくるものですが、今回リストアップしてみました。それから、読み方がわかりにくいものもあるので発音記号も併記しました。

(1) et al. [ètl] およびその他
 英語では and others。著者名を省略するときなどに使います。例えば著者が 3 人以上いるときに代表者の名前を挙げて Yukikagaku et al. のように表記します。et al. は et alii の略なので et の後にピリオドは付かないので注意。似た意味のラテン語に etc. (et cetera) があります。

(2) ibid. [ibid] 同書に、同じ箇所に
 例えばリファレンス 5) に ibid. と書かれていたら 1 つ前のリファレンス 4) と同じ文献という意味。ibid. という名前の雑誌があるわけではないので注意。ibid. は ibidem の略で ib. と略することもあります。
 ちなみに、「同じ」 という意味の他のラテン語に id. (idem) がありますが、「同著者」 の意味に使われることが多い。例えば "id., 文献名" のように書かれていたら 1 つ前のリファレンスと同じ著者の別の文献を意味しています。

(3) "in 〜" シリーズ
 in situ [in saitju(:), in si(:)tu(:) など] その場で、系中で
 in vacuo [in vakjuou] 真空中で
 in vivo [in vi:vou] 生体内で
 in vitro [in vi:trou] 生体外で、試験管内で
 in silico [発音記号不明] コンピューターで

 "in vivo" の発音は 「イン ヴィヴォ」 ではなく 「イン ヴィーヴォウ」 なので注意。同様に "in vitro" は 「イン ヴィトロ」 ではなく 「イン ヴィートロウ」。

(4) その他の化学論文で出てくるラテン語
 e.g. (exempli gratia) たとえば
 i.e. (id est) すなわち、言い換えれば
 v.i. (vide infra) 下記参照
 v.s. (vide supra) 上記参照
 de novo [di:nóuvou] 新規の、初めから
 vice versa [vάɪs(i)v:sə] その逆も同様に、逆に
 ab initio [æb iní∫iòu] 最初から、非経験的
 per se [p:rséi, -sí:] それ自体、本質的に、本来は


(5) 英語みたいに使うけど実はラテン語
 ca. (circa) およそ
 cf. (confer) 参照せよ、比較せよ
 CV (curriculum vitae) 履歴書
 Ph.D. (Philosophiae Doctor) 博士、博士号
 P.S. (post scriptum) 追伸、後記
 a.m. (ante meridiem) 午前
 p.m. (post meridiem) 午後


実際には論文に出てきたときに意味を調べて、使い方と一緒に覚えていくのが効率的かもしれません。ただ、こうやってざっと全体を眺めるのもまた効果的なのではないでしょうか。最後に、もし上で挙げられていないけど化学論文でよく出てくるラテン語があればコメント欄でお知らせください。

09.12.12. 追記
そう言えば "pros and cons"=「良い点と悪い点、賛否」 もラテン語の "pro"=「賛成」 と "con"=「反対」 が由来ですね。

[関連1] 有機化学者が漢字変換登録すべき用語たち [増補版] (気ままに有機化学)
[関連2] 通じない化学用語 (気ままに有機化学)




気ままに有機化学 2009年12月10日 | Comment(10) | TrackBack(0) | 用語・英語
この記事へのコメント
恥ずかしながら上の絵と同じようなことをしたことがありますよ。
だって図書館で探しても見つからないんだもん・・・
Posted by soesoe222222222222222222222 at 2009年12月10日 02:19
「ラテン語は(ほぼ)ローマ字読み…」ではだめなんですかね。
英語読みしたらこんな感じになるでしょうが。
Posted by rskttm at 2009年12月12日 01:33
上のは、in situの発音の話です。
Posted by rskttm at 2009年12月12日 01:39
> rskttm さん
wikipedia によると、「英語の発音は /ɪnˈsaɪtu/, /ɪnˈsaɪtju/, /ɪnˈsaɪʧu/, /ɪnˈsitu/ のいずれかである。ラテン語本来の発音は「イン・シトゥ」だが、日本では英語に近い「イン・サイチュ(ー)」と読むことが多い。」とのことです。私の周りはイン・サイチュー派が多いのですが、イン・シトゥでも大丈夫かと思います。
Posted by 気ままに有機化学(管理人) at 2009年12月12日 10:26
> soesoe222222222222222222222 さん
私も初めは ibid. という雑誌があるのだと勘違いしてしまいました。まぁ最初はそんなものですよね。苦笑
Posted by 気ままに有機化学(管理人) at 2009年12月12日 10:27
> rskttm さん
英語版 Wikipedia では In situ (pronounced /ɪn ˈsiːtuː/) となっていますね。英語圏ではイン・シートゥーがメジャーなのかもしれません。本文の方も改めさせていただきました。


・英語版 Wikipedia
http://en.wikipedia.org/wiki/In_situ
・日本語版 Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/In_situ
Posted by 気ままに有機化学(管理人) at 2009年12月12日 10:51
ちょっと細かいこと(&古い記事に対して)で申し訳有りませんが…
"in silico"ってラテン語なんですか?
in vivoやin vitroを真似して(?)作られた言葉かと思っていただけで、単純な疑問です。
宜しくお願い致します。
Posted by Medz at 2010年04月14日 07:37
> Medz さん
コメントありがとうございます。私もラテン語に詳しいわけではありませんが、個人的には "in silico" もラテン語由来だと思っています。というのは、例えば "in vitro" はラテン語の vitrum (ガラス) を変化させてできた言葉で日本語でもガラスのことをビートロと呼ぶこともあるかと思います。同様に vivum から "in vivo" が生じたものと思います。なので、"in silico" もラテン語の silicium (ケイ素) から派生した言葉ではないでしょうか?・・・と私は思うのですが・・・ (単純に英語のsilicom だったりして)。

一応 Wikipedia の「ラテン語の成句」にも "in silico" が入っていますね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/Category:%E3%83%A9%E3%83%86%E3%83%B3%E8%AA%9E%E3%81%AE%E6%88%90%E5%8F%A5
Posted by 気ままに有機化学(管理人) at 2010年04月14日 23:44
et al.はand other"s"なので、著者が2名の場合はet al.で略してはいけない。
idem.は同著者。ibid.は同誌だ。
Ph.Dは哲学博士。これは科学が哲学の一分野であった名残。
Posted by オッサン at 2012年01月25日 15:42
> オッサン さん
ご指摘ありがとうございます!
et al. と idem については改訂させていただきました。Ph.D. については仰られるとおりかと思いますが今は博士号一般に使われますのでそのままにしました。もし他に間違いや説明不足な点があればどんどんご指摘ください。
Posted by 気ままに有機化学 at 2012年01月26日 23:38
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