NMR で水のピークを消す方法

「水のピークとモノのピークが重なって見えない・・・」

NMR でそんな思いをしたことはありませんか?実際、汎用する重クロロホルム (以下、重クロ) には水が混入しやすく、そうでなくてもサンプルに微量の水が残っていたりして、重クロの 1H-NMR には水がよく出てきます。

問題はそのピークがサンプルのピークと重なって、積分値などが読み取れなくなってしまう場合です。そんなときは重溶媒を変えて NMR を撮り直すのが基本かと思いますが、裏技的に重クロ 1H-NMR から水のピークを消す方法があります。

その方法とは、重水を加えるだけ。重クロ溶液の入った NMR チューブに一滴重水を入れてよく混和させた後、振動を与えて重水を浮かせます (チューブの壁面には重水を残さないように)。あとは通常通り 1H-NMR を測定するだけ。手品のように水のピークが消えてなくなります。

ただし、OH や NH など活性プロトンも消えるのでご注意ください。また、論文に載せるなど公式データとして使っていいのかは確認していません。最後に、情報提供いただいた同僚の S くんに感謝します!

[関連] 各種溶媒の各種重溶媒中の NMR データ (気ままに有機化学)


気ままに有機化学 2009年11月11日 | Comment(6) | TrackBack(0) | コーヒーブレイク
この記事へのコメント
悲報です。
http://cnews.canoe.ca/CNEWS/Canada/2009/11/12/11731241-sun.html

オタワ大のKeith Fagnou教授がH1N1で亡くなったそうです。
website: http://www.science.uottawa.ca/~kfagn061/

C-H活性化によるビアリール構築を中心に魅力的な研究を展開され、今まさに注目されている若手研究者でした。

私も彼の格好いい反応が好きだっただけに非常に残念です。

心よりご冥福を申し上げます。


皆様、インフルエンザには気をつけましょう。
Posted by 悲報です。by はかた at 2009年11月14日 08:47
> はかた さん
ご連絡ありがとうございます。
38歳という若さでの夭折、本当に残念です。
記事の一部で紹介させていただきました。

最近気になった化学系サイト・ニュース・本 2009/11/14
http://chemistry4410.seesaa.net/article/132894870.html
Posted by 気ままに有機化学(管理人) at 2009年11月14日 14:18
初めての訪問です。
私も有機合成でよくNMRを使っています。
そこで、最近不思議な現象で困っています。
水の含有量を調べるため、重クロのブランク測定をするたびに、水の含有量が減っていきます。増えるのならまだ分かるのですが、減るのはなぜだろうか検討がつきません。
また、そのせいか、不純物に水を含む化合物をオイルバス中でかくはんしたり昇華乾燥を行うのですが、水の含有量は減るどころか増えるばかり。
困っています。
何か、検討がつきましたら教えていただきたいのですが・・・。
初めてのコメントで質問をしてしいまいすいません。
もし、分かりそうだったら教えていただけるととっても助かります。
また、訪問させていただきます!
Posted by ぴか at 2009年11月16日 23:43
> ぴか さん
ご訪問&コメントありがとうございます!

ご質問の件、うまく状況を把握できていませんが、
・ パスツールや NMR チューブなどに水が付着している可能性
・ 外気の湿度やサンプリングで空気に触れている時間が異なる可能性
・ 増えた減ったという判断の内部標準に問題がある可能性
などは考えられないでしょうか?

また、もし水の含量が厳密に知りたいのでしたら、NMR ではなくカールフィッシャー法などで定量するのがよいと思います。あと何を目的とされているのか把握していないので何とも言えませんが、重クロロホルムを乾燥剤に通す(あるいは乾燥剤から蒸留する)、重ベンゼン等他の重溶媒の検討などでは解決されない問題でしょうか?
Posted by 気ままに有機化学(管理人) at 2009年11月18日 00:06
ご回答ありがとうございます。
これから行おうとしていた反応は、水に敏感な反応で、反応気質からいかに水を取り除くかが問題となっていました。
内部標準としては重クロ中にもともと不純物として含まれる微量なクロロホルムを用い、トリメチルシラン等は用いていませんでした。
早速、パスツールの乾燥を行なってみました。
また、これまで水にケアするあまり、NMRチューブを130 ℃のオーブンで焼いたものを冷やさずすぐに用いていましたが、一旦冷まし、重クロロホルムを入れたのちしばらく放置するか、あらかじめバイアル中でパスツールで吸ったり出したりを繰り返して空気中と平衡になってから測定するようにしました。
すると、NMRブランク測定を数回行ってみたところ、同じ値が得られ、無事測定することができました。
これで、実験を先に進めることができます。

とても役に立つ適切なアドバイスをありがとうございました。


Posted by ぴか at 2009年11月23日 12:43
> ぴか さん
ご報告ありがとうございます!
微力ながらお役に立てたようで何よりです。
次の禁水反応もうまく行くといいですね。
Posted by 気ままに有機化学(管理人) at 2009年11月23日 23:22
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