HOPE ミーティング Jr. (ジュニア): 小さな科学者の大きな経験

小中学生とノーベル賞受賞者やアジアの大学院生が交流する HOPE ミーティング Jr. (ジュニア) が 9 月 27 日 (日) に開催されました。場所は東京・上野の 国立科学博物館 の一室。こぢんまりとした部屋で人と人との距離が近く、一体感が感じられる会場でした。

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[左] 国立科学博物館 [右] 会場の様子 (画像はクリックで拡大)

参加者は小中学生 15 人とアジアの大学院生 10 人、そしてノーベル賞受賞者の小林誠博士とユアン・T・リー博士。参加する小中学生の親は会場には入れないようです。気になるミーティングの内容は、以下のプログラムで約 2 時間。

  12:00〜 小林博士からのメッセージ
  12:15〜 HOPEミーティング参加学生の指導による化学実験
  12:50〜 小林博士・リー博士を囲んだ昼食会、質疑応答
  13:40〜 リー博士からのメッセージ、記念撮影

まずは小林博士からのメッセージ。「単に教えられたことを覚えるのではなく、自分の言葉で自分の頭で考えて理解を組み立ててほしい。よく考えてわかるというのは楽しいこと。そういう経験をみんなにも積み重ねてほしい」 と小中学生に語りかけました。

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[左] 小林博士、リー博士もすぐそばに [右] 小林博士のメッセージの様子

続いてアジアの大学院生との化学実験。水溶液の液性について、身近なお酢、砂糖水、洗剤を例に挙げて匂いや手触り、中和実験を楽しみました。子供たちからは 「うぉー!」「なんでー?」 などと驚きの声が上がり、「ここで BTB 液加えたらどうなるだろ?」「もっと追加してみよう」 などと科学者の卵らしい探究心も覗かせました。

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[左] 大学院生と化学実験 [右] タイの大学院生(左)と身振り手振りでコミュニケーション

小林博士とリー博士もぶらぶらと各テーブルを回りながら子供たちに話しかけたりしていました。個人的に印象的だったのは、あるテーブルで 「水道水は塩素消毒されているからなぁ」 というような声があって、私が 「(飲料水として用意されていた) Volvic もやってみると面白いかもね」 とつぶやいたところ、何と小林博士自ら実験し始めたのです。その後も Volvic の成分をまじまじと見つめるなど、考察を続けておられました。気になったらすぐにやってみる、そして徹底的に考える、このあたりも小林博士をしてノーベル賞を取らしめた要素の1つかもしれません。

実験が終わったところで昼食会。ミーティング開始直後はやはり少々緊張した面持ちでしたが、実験が功を奏したのか、このころには皆すっかり打ち解けた様子でした。気心が知れたところで子供たちは一斉にサインのおねだり。友達に取られるかもしれないから、と 2 つサインをもらっている小学生もいました。私は子供たちの迫力に負けて、もらい損ねてしまいました。笑

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[左][右] 昼食会。小林博士、リー博士、大学院生、小中学生みな完全に打ち解けた様子

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[左][右] 子供たちにサインをお願いされる小林博士、リー博士

昼食後は質疑応答。小中学生とあなどるなかれ、「光の粒子の正体は何ですか?」「クォークって見えるんですか?」「原子番号の 100 番台でウンウンなんとかという元素がありますがウンウンとはどういう意味ですか?」 など、かなり難しい質問も出ていました。「好きな言葉は?」 との質問にはリー博士は 「先生が言ったことが間違っている、と言うところから科学が進歩する」、小林博士は 「座右の銘はもたない主義。無心に物事を見つめたい」 と答えておられました。

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[左] 博士に質問する女の子 [右] それに答えるリー博士

最後にリー博士から子供たちへのメッセージ。「先生の言うことをききなさい、みんなと同じようにしなさい、と言われますが、他の人と違う新しいことをする勇気をもってください」 とエールを送りました。そして退室時には、小林博士・リー博士から子供たちへのプレゼントとしてノーベル賞のメダル・・・型のチョコレートが手渡されました。いつか本物のノーベルメダルを受け取れる日が来るといいですね。

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[左] ノーベルメダル・チョコレートを受けとって、にっこり [右] 心なしか似ている二人

◆ 取材を終えて
 プロ野球選手はテレビで見れますが、プロ野球選手に生で会って話をしたり握手をしたりする、そういった経験はテレビでは得られない感銘を与えてくれるものです。ノーベル賞受賞者についても、その著書やこうしたブログやメディアを通してある程度うかがい知ることはできますが、やはり実際に会って肌でしか感じとることのできないものがあると思います。今回のミーティングも子供たちにとってかけがえのない経験になったのではないでしょうか。
 今回の HOPE ミーティング Jr. は第 1 回ということもあって、募集 20 人に対して参加 15 人と申し込みさえすればおそらく参加できた状況でした。1 年に 1 回程度で今後も継続予定だそうですので、興味をもたれた方はぜひ次回に応募してみてください。

◆ 毎日小学生新聞の HOPE ミーティング Jr. 関連記事
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気ままに有機化学 2009年10月01日 | Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース
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