
投稿は2週間ほどリスト教授らの方が早く、オンライン出版は3日林教授らの方が早いという切迫ぶり。しかも各々いくつかの触媒を検討していますが、最終的に同じ触媒に辿り着いています。しかし違いが出たのは溶媒選択。林教授らはジオキサンを溶媒中室温下 10 mol%の触媒で高い ee と収率を弾きだしましたが、リスト教授らはアセトニトリル溶媒中氷冷下 20 mol%の触媒で全体的に数%低い ee、20%程度低い収率という結果に留まりました。
両者とも同じ反応系の設定、同じ触媒、同時期の投稿論文でありながら、溶媒選択で林教授らに軍配が上がったかな、というのが私の感想。「世界には自分と同じ研究をしている人が3人はいる」なんていうからできるだけ早く結果を出さないといけないのはもちろん、試せる条件は徹底的に試さないと…。って、これは製薬企業でも同じですね。私の関わっているテーマも世界中に競合があるので急がないと!
ちなみに、アセトアルデヒドは求核剤としても求電子剤としても反応するのでその反応制御が難しかったのですが、最近になってリスト教授らがプロリン触媒によるアセトアルデヒドの不斉マンニッヒ反応を Nature [論文3] に、林教授らはプロリノール型触媒によるアセトアルデヒドの不斉アルドール反応を ACIEE [論文4] に報告しています。思えばこの頃からお互いマイケル反応をやってることに薄々気づいていて、お互いに焦っていたのかもしれませんね。
[論文1] "Asymmetric Michael Reaction of Acetaldehyde Catalyzed by Diphenylprolinol Silyl Ether" Yujiro Hayashi et al. ACIEE, 2008, 47, 4722.
[論文2] "Catalytic Asymmetric Michael Reactions of Acetaldehyde" Benjamin List et al. ACIEE, 2008, 47, 4719.
[論文3] "Proline-catalysed Mannich reactions of acetaldehyde" Benjamin List et al. Nature, 2008, 452, 453.
[論文4] "A Diarylprolinol in an Asymmetric, Catalytic, and Direct Crossed-Aldol Reaction of Acetaldehyde" Yujiro Hayashi et al. ACIEE, 2008, 47, 2082.
てか、林先生がすごいのは当然ですが、それは助手の人がすごい!Bogerに見初められるほどの人です。
コメント・情報ありがとうございます!
見逃さないように気を付けて論文チェックします!
もしりこぽんさんが先に気づかれたらコメント欄で教えていただけると幸いです。
あと助教の方にも注目してみます!
優秀なスタッフや学生が面白いテーマを考える → 面白いテーマがあるから(優秀な人材がいるから)優秀な人材が集まる → 集まった優秀な人材が面白いテーマを考える → ・・・という好循環になってそうですね。