2014年8月の有機化学関連書籍
◆ 和書
・ クリックケミストリー―基礎から実用まで
・ スピン化学が拓く分子磁性の新展開: 設計から機能化まで
・ 採択される科研費申請ノウハウ―審査から見た申請書のポイント
・ 最強の毒物はどれだ? ―気になる物質の頂上決戦・五番勝負―
・ 現代化学 2014年 09月号 [雑誌]
・ 化学 2014年 09月号 [雑誌] (一部を除いて 化学同人 HP で無料で読めます)
◆ 洋書
・ Side Reactions in Organic Synthesis II: Aromatic Substitutions
・ The Art of Problem Solving in Organic Chemistry
・ Pincer and Pincer-Type Complexes: Applications in Organic Synthesis and Catalysis
・ Understanding Organometallic Reaction Mechanisms and Catalysis Experimental and Computational Tools
・ Gold Catalysis: An Homogeneous Approach
・ Discovering the Future of Molecular Sciences
・ Making and Exploiting Fullerenes, Graphene, and Carbon Nanotubes
・ Progress in the Chemistry of Organic Natural Products 99
・ Amino Acids, Peptides and Proteins (リンク先のアマゾンの商品画像が謎)
気ままに有機化学 2014年09月11日
| Comment(0)
| 月別有機化学関連書籍
新反応発見の方法論 (3)
新反応発見の方法論 (1)、(2) では GC-MS を検出系とした新反応をスクリーニング的に見つけだす方法について紹介しました。今回は、MS 部分に一工夫こらした Sergey A. Kozmin 先生らの 2013 年の Nature Chemistry [論文] を取り上げます。
今回も種々の試薬や触媒の組み合わせを試して MS で反応が起こったかどうかを判断するのですが、下図のように、基質にピレン環を MS ラベルとして組み込んでいるのが特長です (Reactant A)。ピレンラベル導入により下記の利点が生じます。
[1] レーザーによる選択的な脱離イオン化が可能となる。(他の反応剤などの m/z は観測されず、ピレンラベルの付いた基質の m/z だけを観測することができる。ラベルなしではイオン化されにくいような化合物でも検出可能になる。)
[2] 反応液を直接 TOF-MS で分析するので、GC-MS や LC-MS のようにクロマトの時間を必要としないためスループットが向上。696 スペクトル/2時間。
[3] 高感度のため微量サンプルで分析可能で、反応系をスケールダウン可能。ロボットで 96 穴プレートに 696 の反応を仕込み、1時間、1日、4日時点で反応液 0.8 μL を用いて分析。
[4] ピーク強度比とモル比がほぼ一致するため、変換収率を見積もることができる。実際に、クルードの 1H-NMR で求めた変換収率とピーク強度から求めた変換収率はほぼ一致する。これにより、反応の発見だけでなく最適化にもこの方法は有用。

実際に、ピレン環をラベルとして組み込んだシロキシアルキン (Ractant A) と、24 種類の Reactants B、29 種類の Reagents C の組み合わせ (24×29=696) の条件を検討し、2種類の新規ベンズアニュレーション反応を発見しました(発見した反応の詳細は論文を参照ください)。
シロキシアルキンを基質に選んでいるのは、Kozmin 先生らのグループではシロキシアルキンの反応をいくつも開発してきたという背景があるからだと思われます。シロキシアルキンの反応相手 (Reactants B) の選択も面白いですね。新反応発見の方法論 (1)、(2) でも、新反応のスクリーニング方法が一番のトピックですが、「どんな反応剤や触媒をスクリーニングの対象とするか」も見どころではないかと密かに思ってたりします。
[論文] Cabrera-Pardo JR, Chai DI, Liu S, Mrksich M, Kozmin SA. Label-assisted mass spectrometry for the acceleration of reaction discovery and optimization. Nat Chem. 2013; 5(5): 423-7. doi: 10.1038/nchem.1612
今回も種々の試薬や触媒の組み合わせを試して MS で反応が起こったかどうかを判断するのですが、下図のように、基質にピレン環を MS ラベルとして組み込んでいるのが特長です (Reactant A)。ピレンラベル導入により下記の利点が生じます。
[1] レーザーによる選択的な脱離イオン化が可能となる。(他の反応剤などの m/z は観測されず、ピレンラベルの付いた基質の m/z だけを観測することができる。ラベルなしではイオン化されにくいような化合物でも検出可能になる。)
[2] 反応液を直接 TOF-MS で分析するので、GC-MS や LC-MS のようにクロマトの時間を必要としないためスループットが向上。696 スペクトル/2時間。
[3] 高感度のため微量サンプルで分析可能で、反応系をスケールダウン可能。ロボットで 96 穴プレートに 696 の反応を仕込み、1時間、1日、4日時点で反応液 0.8 μL を用いて分析。
[4] ピーク強度比とモル比がほぼ一致するため、変換収率を見積もることができる。実際に、クルードの 1H-NMR で求めた変換収率とピーク強度から求めた変換収率はほぼ一致する。これにより、反応の発見だけでなく最適化にもこの方法は有用。

実際に、ピレン環をラベルとして組み込んだシロキシアルキン (Ractant A) と、24 種類の Reactants B、29 種類の Reagents C の組み合わせ (24×29=696) の条件を検討し、2種類の新規ベンズアニュレーション反応を発見しました(発見した反応の詳細は論文を参照ください)。
シロキシアルキンを基質に選んでいるのは、Kozmin 先生らのグループではシロキシアルキンの反応をいくつも開発してきたという背景があるからだと思われます。シロキシアルキンの反応相手 (Reactants B) の選択も面白いですね。新反応発見の方法論 (1)、(2) でも、新反応のスクリーニング方法が一番のトピックですが、「どんな反応剤や触媒をスクリーニングの対象とするか」も見どころではないかと密かに思ってたりします。
[論文] Cabrera-Pardo JR, Chai DI, Liu S, Mrksich M, Kozmin SA. Label-assisted mass spectrometry for the acceleration of reaction discovery and optimization. Nat Chem. 2013; 5(5): 423-7. doi: 10.1038/nchem.1612
気ままに有機化学 2014年09月03日
| Comment(0)
| 論文 (反応)