化学同人の本が 50%OFF、昨日より一週間


化学者の皆さんに朗報です!昨日から一週間 (2012年7月28日〜8月3日)、化学同人の決算セール で 200 冊の対象書籍が 50%OFF です。書籍は通常値引きされないものですのでこういう機会は貴重ですね。(支払いは代引きのみ。書籍 5 冊以上または合計 5000 円以上お買上で送料・代引手数料が無料。書籍 5 冊未満もしくは合計 5000 円未満は送料・代引手数料として 500 円が別途必要です)

ちなみに 化学のブレークスルー(有機化学編) 革新論文から見た10年の進歩と未来 のように現在では書店や Amazon でも新品が手に入らない本もあります。この本、現在の Amazon の中古品の出品では 9980 円の値が付けられていますが、元値は 1000 円、今回のセールでは 500 円で購入可能です。こうした掘り出し物もありますので、興味ある方は一度目を通してみてはいかがでしょうか。

対象書籍の一覧や詳しい注文方法は 化学同人のホームページ をご覧ください。

[余談] 実は 2 年前にも 化学同人の本が 50%OFF、本日より一週間 で決算セールを勝手に紹介させていただきました。昨年は紹介しませんでしたが同様のセールが開催されていましたので、毎年この時期に決算セールが行われているようです (少なくともここ 3 年間は)。


気ままに有機化学 2012年07月29日 | Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース

ChemDraw を貼った文書の PDF 化トラブルと解決策

今回は私が遭遇した ChemDraw を貼った文書の PDF 化で絵が汚くなるトラブルと解決策についてご紹介します。おそらく ChemDraw、Word (PowerPoint)、Adobe PDF のバージョンの組み合わせによると思いますが、ChemPort 掲載の研究室のセミナー資料を見ていても同様のトラブルはちょくちょく起こっているようです。

さて、絵が汚くなるトラブルが起きたのは ChemDraw を Word (PowerPoint) に貼りつけて、その文書を Adobe PDF で PDF に変換したときです。例えば、過去記事の 製薬企業が見つけたホスホニウム系縮合剤の新反応 の最後の図の ChemDraw を Word に貼ってそれを 「ファイル」→「Adobe PDFとして保存」→「保存」 (細かい操作は Word のバージョンによります) で PDF に変換してみました。なんということでしょう、文字列が 「超オシャレ」 になってしまいました。よくよく見ると構造式の元素記号も微妙にズレちゃっています。


まぁこれはこれで芸術的と言えなくもないですが、やっぱり普通に PDF にしたいですよね。そこで PDF への変換方法を改めて、「ファイル」→「印刷」→「プリンター」を「Adobe PDF」に変更して「印刷」 (細かい操作は Word のバージョンによります) で PDF 化してみました。すると、なんということでしょう、自分の目が悪くなったのではないかと思うくらい文字がぼやけてしまいました。実はこう見えて印刷すると意外と綺麗にプリントされたりするのですが、PDF で相手に渡す場合などはやはり見栄えが悪いと言わざるをえません。


実験と同じであらゆる手段を講じるまで諦めてはいけません。通常はあまり使わない PDF 化の方法だと思いますが、「ファイル」→「名前を付けて保存」→「ファイルの種類」を「PDF」に変更して「保存」 (細かい操作は Word のバージョンによります) で PDF 化したところ、ようやく美しい PDF に変換することができました


冒頭で述べたようにおそらく ChemDraw、Word (PowerPoint)、Adobe PDF のバージョンによるとは思いますが、上記のように PDF 化の方法を変更することで解決できる場合もあります。この記事が、ChemDraw を貼った文書の PDF 化で困っている方の役に立てば幸いです。また、もし他の対処法などご存知でしたらコメント欄などからご連絡ください。

追記
コメント欄で らじかる さんに別法を教えていただきました。ChemDraw の「File」→「Preferences」 で「Use Antialiasing When Generating Windows Metafiles」 のチェックボックスを外す → ChemDraw から Word に貼り付ける と、絵の線が Word 上ではややギザギザになりますが、Acrobat で変換したときに絵がぼやける現象が解消されます。私が試したところ、確かに教えていただいたとおりになりました。この方法も有効です!

[関連] ChemDraw を使いこなすための参考資料 [日本語] (気ままに有機化学)

気ままに有機化学 2012年07月20日 | Comment(2) | TrackBack(0) | コーヒーブレイク

化学用語の語源 (1)

言葉の語源を知ることは、ときに新しい発見や驚きを生み出してくれます。また、語源を知ることで記憶が強固なものになったり、場合によっては未知の単語の意味を推測することができるようになります。さらに、相手を選んで上手く使えば会話を盛り上げることができます (注意:デートでは使わないように。笑)。

さて、今回は 『人物で語る化学入門 (岩波新書)』『21世紀の知を読みとく ノーベル賞の科学 【化学賞編】』『セレンディピティー―思いがけない発見・発明のドラマ』 から、「不斉」「元素」「イオン」 に関する化学用語の語源をいくつか紹介します。

chiral
「本年のノーベル化学賞は、互いのミラーイメージ (鏡像) である 2 つの形態として生じる分子に関わるものです。そのような分子は "キラル (カイラル)" と呼ばれますが、これは手を意味するギリシア語 "ケイル (cheir)" を語源としています」
[出典] 21世紀の知を読みとく ノーベル賞の科学 【化学賞編】 [p.140]

語源を同じくして英語では chiro- は手を意味する接頭辞として用いられ、chirography (筆跡)、chiromancy (手相占い) などが挙げられます。また、カイロプラクティックも、英語では chiropractic、日本語では脊柱指圧療法なので同じ語源だと思われます。

ところで、chiral でない場合には否定の接頭辞 a- を付けて achiral としますが、実は原子を意味する atom の a- も否定の接頭辞なのです。

atom
原子の英語 atom はギリシア語に由来する。a は否定詞、tom は 「分ける」 を意味するから、原子はその名前に 「これ以上分けれない」 という自らの属性を宣言しているといってよい。
[出典] 人物で語る化学入門 [p.8]

tomos は切断を意味するギリシャ語で、医療で使われる CT (computed tomography, コンピュータ断層撮影) や PET (positron emission tomography, ポジトロン断層撮影) の tomography (断層撮影)、anatomy (解剖)、『気ままに創薬化学』 の 医学英語の接頭辞・接尾辞 で紹介した -ectomy (切除、摘出)、-tomy (切開) も同じ語源です。

原子を構成する陽子と電子 (というか電気) の語源についても紹介されていました。

proton
水素の原子核の電荷は +1 であり、これ以上分割することはできないから、これは電子と同じように、原子の基本構成要素である。そこでラザフォードはこれをギリシア語の 「最初」 を表すプロトス (protos) から 「プロトン (陽子)」 (proton) と名づけた。
[出典] 人物で語る化学入門 [p.14]

electricity
古代ギリシアの人たちは、摩擦した琥珀にものが吸い寄せられる現象、つまり摩擦電気を知っていたし、その知識は中世にまで受け継がれた。実際、電気を表す英語 electricity はギリシア語の琥珀に由来する。
[出典] 人物で語る化学入門 [p.54]

ギリシア語の琥珀って何なんだろう、と思って検索してみたら、電気-wikipedia にも 「電気を表す英単語 electricity はギリシア語の ηλεκτρον ([elektron], 琥珀)に由来する。」 とのこと。電子 (electron) にそっくりですね。

イオン関連の語源についても書かれていました。cation の由来については、決して cation の真の姿。 ではないので要注意です。笑

ion, cation, anion, cathode, anode
彼 (引用注:ファラデー) は電気分解に際して、電荷を帯びたものが生じ、それが移動すると考えた。そこで 「行く」 のギリシア語 ienai をとって、その電荷を帯びたものをイオン (ion) と呼んだ。イオンには陽イオンと陰イオンとがあり、それを区別するために、前者が 「下がる」 を意味するギリシア語 katienai をとってカチオン (cation)、後者が 「上がる」 を意味するギリシア語 anienai をとってアニオン (anion) と命名された。同様に、電極の名称、「陰極」 (カソード cathode) と 「陽極」 (アノード anode) は、それぞれ、下がる、上がるに、「道」 を意味するギリシア語 hodas をくっつけてつくられた。電気分解 (electrolysis)、電解質 (electrolyte)、電極 (electrode) といった用語も同様につくられた。
[出典] 人物で語る化学入門 [p.70]

上の記述の後に、「陰イオンでもアニオンでもない、「マイナスイオン」 という言葉がその怪しげな効能とともに近年広く用いられている」 という痛烈な指摘がなされています。「マイナスイオン」 などというものは化学では存在しません。

最後に、不斉反応の研究者は必読、ラセミの語源がブドウだという豆知識でおしまいです。

racemic
パストゥールは、ワインの発酵中に樽の中に沈殿するブドウ酸 (ラセミ酸) の塩の研究を始めた (ラセミはブドウの房を意味するラテン語から来ている)。(中略) 酒石酸の塩が 「光学活性」 であるのに対して、ブドウ酸の塩がそうではないということであった。(中略) パストゥールは彼の右手型ブドウ酸の塩が実は右旋性の酒石酸の塩と同一物であることと、彼の左手型ブドウ酸の塩はこれまで知られていなかった酒石酸年の鏡像体 (鏡に写った裏返しの像) であることを証明したのであった。最後にパストゥールは、二種類の結晶を同量ずつ混ぜ合わせ、その溶液が予想どおり光学不活性となることも見つけた。パストゥールはブドウ酸の塩の二種類の結晶を選り分けることによって、化学者が今ではラセミ体の 「分割」 と呼んでいる最初でかつ最も有名な操作を行ったのである。〔パストゥールが研究したブドウ酸 (ラセミ酸) にちなんで、鏡像体どうしの混合物をラセミ体という〕。
[出典] セレンディピティー―思いがけない発見・発明のドラマ [pp.81-83]

化学用語の語源 (2) に続く・・・かも。

気ままに有機化学 2012年07月03日 | Comment(1) | TrackBack(0) | 用語・英語

有機化学系あれこれ 2012/7/1

今週の Nature より、有機化学系論文
Activation of remote meta-C–H bonds assisted by an end-on template
Direct and highly regioselective and enantioselective allylation of β-diketones

最近の海外有機化学系ブログより
Where Did It All Go Wrong (B.R.S.M.)
Name A and B! (Synthetic Remarks)
THIS is heterocyclic chemistry (Synthetic Remarks)

imgur より、化学系おもしろ画像
In Chemistry Class today....
What does this look like to you?
Time Spent as an Organic Chemist

ワイリーサイエンスカフェより
K. C. Nicolaouらが語る「全合成の舞台裏」
グリニャールとサバティエ:1912年ノーベル化学賞の裏にあった共同研究者の貢献度をめぐる論争
林雄二郎先生を客員編集長に迎えたChemCatChem「有機触媒」特集号 − 表紙のネコは何を思う?

本日の名言
 それ (引用注:石油) を原料にして化学反応によって、作りたいものを意のままに創り出す技術を人間は持ったのです。しかしそのために…本来地球上に存在しないものが大量にあふれ、それまでの地球史に比べて極めて短時間に環境に大きな影響を及ぼすことになってしまったのは事実です。これからは新しい物質の開発だけでなく、その処理まで考えることが必要なのです。
[出典] マンガ おはなし化学史 [pp.289-290]

気ままに有機化学 2012年07月01日 | Comment(0) | TrackBack(0) | サイト・ツール・本