有機化学系あれこれ 2012/5/13

Conditions You’ll Probably Never be Desperate Enough to Try (B.R.S.M)
 やってみようなどとは露にも思わない反応条件の紹介。「鮭精巣由来 DNA 触媒のマイケル反応」「動物骨粉触媒のヘテロ環合成」「細かく刻んだ人参を用いた不斉還元」「ハイネケン中でのマイケル反応」 が紹介されています。・・・確かに一生やることはない気がする。

発表のデザインについて
伝わるデザイン 研究発表のユニバーサルデザイン
科学技術コミュニケーション、ビデオと電子書籍で学べます (CoSTEP)

『ラブ・ケミストリー』 がテレビ番組の題材に 
 ミステリー小説を映像化しゲストが謎解きをするテレビ番組 「超再現!ミステリー」 の 5/8 放送分の題材に 『ラブ・ケミストリー』 が取り上げられました。ネットで検索をかければ動画も出てきますが、長時間だったり海外動画サイトだったりするので、研究室や職場のパソコンでは見ないようにご注意を。ただし、有機化学的な描写はあまりなく、主人公の能力も少しおかしなことなってますので、有機化学的な楽しみ方をしたい方は原著をオススメします。

ワイリー・サイエンスカフェより
お探しの本があればお得! 理工洋書専門のオーヴィス・ウェブショップでWiley書籍を特価セール
<論文紹介> パラジウム触媒クロスカップリング − 歴史的視点で見た2010年ノーベル化学賞
<記事紹介> フェロセンの発見とサンドイッチ構造の解明への道のり

本日の名言
 起きている時間は、ほとんど全部、科学のことを考えています。九時から五時までの職業とは違いますから。科学者として成功するためには、本当に、時間のある限り考えぬいて、眠っているときにさえ、無意識のうちに問題に挑み続けていることを願わなくてはなりません。答えが出るまで、まるで獲物に食いついて放さないテリアのようなものです。これは、人を完全に没頭させる、一日二四時間の職業です。
 マイケル・バーリッジ (細胞生物学者) の言葉
 『科学者の熱い心―その知られざる素顔』[pp.276-277] より

 科学者というのは九時から五時までの仕事じゃないということだ。科学をやるとなったら、一日二四時間やらなきゃならん。家にいる時も科学のことを考えなくちゃならないし、ベッドに入ったら科学の夢を見るだろうさ。要するに、頭からどっぷり科学に漬かるってことだよ。
 カルロ・ルビア (素粒子物理学者) の言葉
 『科学者の熱い心―その知られざる素顔』[p.379] より


気ままに有機化学 2012年05月13日 | Comment(0) | TrackBack(0) | サイト・ツール・本

灘校の文化祭に行ってみた

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兵庫県神戸市にある有名進学校の灘校 (灘中学校、灘高等学校)。灘校の文化祭は毎年 5/2-3 に行われているようで、私は昨日 5/3 に行ってきました。カレンダー上も休日ということもあってか、老若男女たくさんの人で賑わっていました。

このブログ 「気ままに有機化学」 では化学研究部の様子を中心に紹介します。灘校の化学研究部は、全国高校化学グランプリ国際化学オリンピック での受賞者を毎年のように輩出している名門のひとつです。いったいどんな人たちがどんな活動をしているのでしょうか?

化学研究部の展示室へ向かうと、展示室の廊下には スライム 作りの体験コーナー。小中学生を中心に、好きな色を付けたスライムを作っていました。これだけでも大盛況で、子どもたちのハートをぐっと掴んでいました。

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化学研究部の展示室に入ると、黒板には 「化研へようこそ」 と大きな文字が。

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でも注目すべきは文字ではないのです。「化研へようこそ」 の周りの囲みをよくよく見ると、共役ポリエンになっています。この細かい演出がにくいですねぇ。私のハートはここでぐっと掴まれました。

「化研へようこそ」 の文字の下には 「化研クイズ」 なるものの存在が書かれています。これはやらずに帰れないので、もちろん挑戦しました。びっくりしたのは、灘校の化学研究部の学生は大学学部レベルをすでに学習しているようなのです。下の写真の右上 <化学が好きすぎて生きるのが辛いあなたに> という問題を見てもらえばわかると思います。でも私が苦戦したのはここではなく、下の写真には写っていませんが <化学が楽しくなってきたあなたに> という問題です。例えば、「安定同位体が最も多い元素は何?」「2011年12月にIUPACが提案した114番元素と116番元素の名前はそれぞれ何?」「単体が夏の暑い日(40℃)で液体の元素は?」「質量保存の法則を発見した人は何が原因で殺された?(ヒント:歴史的事件)」など、非常にマニアックな 化学に対する愛がビシビシ伝わってくる問題でした。

問題作成者の方に確認を取っていませんのですべての問題を載せることはしませんが、昨年の問題と解答が 灘校化学研究部公式ホームページ に掲載されていますので、ぜひ解いてみてください。(5/5 追記: 今年の問題と解答も公開されました)

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化学研究部の方に採点してもらい、私は 66 点でした。20 点以上で景品がもらえ、上の写真の灘校消しゴムをいただきました。私の採点のときに、大学レベルの問題の答えが書いてあるのを見た部員の方が嬉しそうにしていたのが印象的でした。化学がすっごく好きなんだろうなぁ。

ちなみにそれまでの最高得点は 59 点で、私の 66 点が最高得点を更新したそうです。化学研究部では 90 点以上を化学廃人、60 点以上を化学オタクとしていたみたいで、「化学オタク、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!!!」 みたいなことを言っていただけました。次の機会があれば、化学廃人めざして頑張ります。

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「化研クイズ」 以外にも、化学用語を説明したポスター、化学発光の実演、分子模型や蒸留装置の展示と解説、銀鏡反応や油脂からの石鹸合成の実物、など多数の展示がなされていました。が、このブログの読者には釈迦に説法なので省略。

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多数の展示物がある中で私の目をひいたのは、黒板にさりげなく書かれていた下の写真の落書き。灘校の化学研究部、いろんな意味でただ勉強ができるだけの人たちではなさそうです。

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展示室の最後で、下の写真の「化学の散歩道」 という部誌のようなものをいただきました。表紙が素敵。内容は部員の方が各々興味をもったトピックについて数ページにまとめたもので、伝導性高分子サンドイッチ化合物 など明らかに高校化学の範囲を超えたものもあり、参考文献には、『大学院講義有機化学』 など大学院レベルの教科書や 『Nature』『JACS』 など英語の学術文献が挙げられていました。恐るべし、灘校化学研究部。(5/5 追記: 部誌も 化学研究部ホームページ で公開されました)

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灘校化学研究部は、展示以外にも 「化学ショー」 として 8 つの化学マジックの実演会もやっていました。液体に漬けると文字が浮かび上がる 「Bloody Letters」、ハンカチに火を点けたのに燃えていない 「燃えないハンカチ」、次々に色が変わる液体 「レインボービーカー」、火を使わずにろうそくを点火する 「魔法の棒」、薬品を混ぜるとモコモコと泡が湧き出る 「モコモコ」 (下写真の黄色い物体)、手に火を点けても大丈夫 「燃えよ拳」 (下写真の黒板では漢字を間違えています)、二種類の液体を混ぜると光る 「光るフラスコ」、火を点けると激しい光 「閃光花火」、です。ここでは種明かしはしませんが、文化祭では実演のあとに解説がありました。

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化学研究部以外にも、ここでは伝えきれないくらい多数の展示やイベントがあったのですが、ひとつだけご紹介を。灘校に、あの 『ももクロ』 が!・・・いや、実はこれは灘校生 (男子校) による『もの好きクローバーZ』 なのです。私のうしろにいた男子が 「あのピンクいい脚してんなぁ」 とつぶやいていたのがちょっと気になります。灘校生、やはりいろんな意味でただ勉強ができるだけの人たちではなさそうです。笑

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今回は化学研究部を中心に紹介しましたが、数学・物理・生物・地学・地歴・マジック・クイズ・英語・鉄道・無線・新聞・写真・書道・囲碁・将棋・ディベート・パソコン (ハッキング実演なども)・ドラえもん同好会 (?)・カジノ (!)・クラシックコンサート (レベル高い)・占い (なぜかラグビー部)・スリラーハウス (なぜかサッカー部)・古本 (なぜか剣道部)・美少女コンテスト (注:男子校です)・灘校の数学の先生の体験授業、などなど魅力的な展示やイベントが盛りだくさんでした。

一般公開されていますし (私も灘校の出身ではありません)、飲食以外はほとんどが無料です。興味をもった方はぜひ来年のゴールデンウィークに足を運んでみてください。

気ままに有機化学 2012年05月04日 | Comment(7) | TrackBack(0) | コーヒーブレイク