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[問題] 反応機構クイズ
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2009年07月12日
2009年07月03日
反応機構クイズ
反応機構の問題については Robert B. Grossman の The Art of Writing Reasonable Organic Reaction Mechanisms や 福山透研究室の反応機構の問題を基に編纂された 演習で学ぶ有機反応機構―大学院入試から最先端まで など名著揃いですが、今回は一味違った反応機構クイズを紹介します。
[問題] 以下の反応のメカニズムを書きなさい。

簡単だと思った方への追記ですが、この反応機構は下に示す付加-脱離 (Addition-Elimination) 型の求核置換反応 (Nucleophilic Substitution) ではありませんので。

さらに追記ですが、下に示す脱離-付加型のベンザイン経路でもありませんので。

さて、上記を踏まえた上で反応機構を考えて見てください。解答は約 1 週間後に!
[問題] 以下の反応のメカニズムを書きなさい。

30 秒考えてから続きをどうぞ。
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簡単だと思った方への追記ですが、この反応機構は下に示す付加-脱離 (Addition-Elimination) 型の求核置換反応 (Nucleophilic Substitution) ではありませんので。

もう 30 秒考えてから続きをどうぞ。
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さらに追記ですが、下に示す脱離-付加型のベンザイン経路でもありませんので。

さて、上記を踏まえた上で反応機構を考えて見てください。解答は約 1 週間後に!
2009年06月27日
アキシャルに立つとき
立体化学の原則の 1 つに、いす型飽和六員環の置換基はアキシャルよりもエカトリアルが優位になるというものがあります。しかし 「例外のない規則はない」 ということわざに洩れず、置換基がアキシャルに立つこともあるのです。今回はメカニズムの異なる 3 つのケースを紹介します。
(1) イソプロピル基がアキシャルに立つとき/立体効果
下に示す all-trans-1,2,3,4,5,6-Hexaisopropylcyclohexane は、驚くべきことに全ての置換基がアキシャルに立つという極めて特殊な化合物です [論文1]。置換基が 1 つしかない Isopropylcyclohexane や構造的に近い all-trans-1,2,3,4,5,6-Hexaethylcyclohexane はエカトリアル優位なことからもその特異性が感じられます。X線構造をよく見ると、メチン水素 (イソプロピルの枝分かれ部分の水素) がうまくシクロヘキサン環の内側を向いて最も立体反発の小さい形になっていることが窺えるかと思います。エカトリアル同士だとぶつかるけど、アキシャルに立てばうまくコンパクトに収まるイソプロピル基。これがミソ。この素晴らしい結果には、イソプロピル基も総立ちでスタンディングオベーションを贈っているようです。

(2) フルオロ基がアキシャルに立つとき/電荷-双極子相互作用
創薬化学においてピペリジン環へのフッ素の導入は常套手段の 1 つで、その目的は主にピペリジンの塩基性を落とすことですが、コンフォメーションにも関与することがわかってきています。というのは、3-フルオロピペリジンはフッ素がエカトリアル優位なのに対し、プロトン化されたものはアキシャル優位になるのです [論文2]。構造は計算、NMR、X線で裏付けしています。NH2+ の場合だけでなく、NHMe+、NMe2+ でもアキシャル優位が見られ、要因として C-F…H-N の水素結合による寄与は小さく、C→F と H→N+ の間の電荷-双極子相互作用が効いているようです。

(3) クロロ基とブロモ基がアキシャルに立つとき/ホスト-ゲスト
クロロあるいはブロモシクロヘキサンは通常エカトリアル優位の平衡状態で存在しますが、2005 年にアキシャル配座が "単離" されました [論文3]。それは 9,9'-bianthryl と共結晶にするという少しトリッキーな技によってです。著者らは、 9,9'-bianthryl の単結晶が小さな空洞をもち、コンパクトで立方体状のものが入りそうなことを発見し、よりコンパクトなアキシャル型のクロロシクロヘキサンを取り込むのではないかと考え、これを試みたようです。構造はX線結晶構造解析によって裏付けられています。ブロモシクロヘキサンも同様にし、X線は撮れなかったものの、IR によるエカトリアル型 C-Br の消失や、クロロ体との粉末X線パターンの比較によって、これもアキシャル型になっていると推定しています。

最後に、これは私の勝手な想像ですが、著者らが初めてクロロ基がアキシャルに立つことを確認したとき、どこか懐かしい感動と共にこう叫んだのではないでしょうか。「クロロが立った!」

[論文1] "all-trans-1,2,3,4,5,6-Hexaisopropylcyclohexane: an all-axial hexaalkyl cyclohexane" J. Am. Chem. Soc. 1990, 112, 893.
[論文2] "3-Fluoropiperidines and N-Methyl-3-fluoropiperidinium Salts: The Persistence of Axial Fluorine" Chem. Eur. J. 2005, 11, 1579.
[論文3] "Isolation of axial conformers of chloro- and bromocyclohexane in a pure state as inclusion complexes with 9,9-bianthryl, and the discovery of a novel 1,3 diaxial ClH weak interaction" Chem. Commun. 2005, 3646.
(1) イソプロピル基がアキシャルに立つとき/立体効果
下に示す all-trans-1,2,3,4,5,6-Hexaisopropylcyclohexane は、驚くべきことに全ての置換基がアキシャルに立つという極めて特殊な化合物です [論文1]。置換基が 1 つしかない Isopropylcyclohexane や構造的に近い all-trans-1,2,3,4,5,6-Hexaethylcyclohexane はエカトリアル優位なことからもその特異性が感じられます。X線構造をよく見ると、メチン水素 (イソプロピルの枝分かれ部分の水素) がうまくシクロヘキサン環の内側を向いて最も立体反発の小さい形になっていることが窺えるかと思います。エカトリアル同士だとぶつかるけど、アキシャルに立てばうまくコンパクトに収まるイソプロピル基。これがミソ。この素晴らしい結果には、イソプロピル基も総立ちでスタンディングオベーションを贈っているようです。

(2) フルオロ基がアキシャルに立つとき/電荷-双極子相互作用
創薬化学においてピペリジン環へのフッ素の導入は常套手段の 1 つで、その目的は主にピペリジンの塩基性を落とすことですが、コンフォメーションにも関与することがわかってきています。というのは、3-フルオロピペリジンはフッ素がエカトリアル優位なのに対し、プロトン化されたものはアキシャル優位になるのです [論文2]。構造は計算、NMR、X線で裏付けしています。NH2+ の場合だけでなく、NHMe+、NMe2+ でもアキシャル優位が見られ、要因として C-F…H-N の水素結合による寄与は小さく、C→F と H→N+ の間の電荷-双極子相互作用が効いているようです。
(3) クロロ基とブロモ基がアキシャルに立つとき/ホスト-ゲスト
クロロあるいはブロモシクロヘキサンは通常エカトリアル優位の平衡状態で存在しますが、2005 年にアキシャル配座が "単離" されました [論文3]。それは 9,9'-bianthryl と共結晶にするという少しトリッキーな技によってです。著者らは、 9,9'-bianthryl の単結晶が小さな空洞をもち、コンパクトで立方体状のものが入りそうなことを発見し、よりコンパクトなアキシャル型のクロロシクロヘキサンを取り込むのではないかと考え、これを試みたようです。構造はX線結晶構造解析によって裏付けられています。ブロモシクロヘキサンも同様にし、X線は撮れなかったものの、IR によるエカトリアル型 C-Br の消失や、クロロ体との粉末X線パターンの比較によって、これもアキシャル型になっていると推定しています。

最後に、これは私の勝手な想像ですが、著者らが初めてクロロ基がアキシャルに立つことを確認したとき、どこか懐かしい感動と共にこう叫んだのではないでしょうか。「クロロが立った!」

[論文1] "all-trans-1,2,3,4,5,6-Hexaisopropylcyclohexane: an all-axial hexaalkyl cyclohexane" J. Am. Chem. Soc. 1990, 112, 893.
[論文2] "3-Fluoropiperidines and N-Methyl-3-fluoropiperidinium Salts: The Persistence of Axial Fluorine" Chem. Eur. J. 2005, 11, 1579.
[論文3] "Isolation of axial conformers of chloro- and bromocyclohexane in a pure state as inclusion complexes with 9,9-bianthryl, and the discovery of a novel 1,3 diaxial ClH weak interaction" Chem. Commun. 2005, 3646.

